大子物語

散りぬべき 時知りてこそ 世の中の 花も花なれ 人も人なれ

ヨロコビハレルヤ

淡い微熱のような怒り。

唸る高熱のような倦怠感。

解熱しようとするヒトヒラの好奇心。

漆黒の暗闇にぼんやりと漂う一匹の蛍のような好奇心。

 

蛍は暗闇でしか光らない。

 

僕は蛍を探すことをやめて自らの意思で目を閉じた。

物語は完全に終わるはずだった。

 

でも、エンドロールが終わらない。

 

音楽はもう聞こえない、映像も流れない。

何も聞こえない、何も見えない。

でも、エンドロールが終わらない。

 

いつからだろうか、僕にとって生きることが暇つぶしになったのは。

昔に読んだ小説の次の一節が、僕の頭で延々とリフレインしている。

 

自分には幸福も不幸もありません。 ただ、一切は過ぎて行きます。 自分が今まで阿鼻叫喚で生きて来た 所謂『人間』の世界に於いて、 たった一つ、真理らしく思はれたのは、 それだけでした。

ただ、一さいは過ぎて行きます。

 

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僕はどこから来たのか、僕は何者か、僕はどこにいくのか。

なぜ何もないのではなく、何かがあるのか。

ゴーギャンにとってのタヒチであるように、僕にとっての茨城県大子町

僕はここで生きて、ここで死んでいく。

望むとも望まずとも。

 

東京物語」のようなリアリズムはないけれど、ニヒリズムの風に漂う一片の桜の花びらのような淡々とした僕のすべてを「大子物語」として紡いでいく。

 

僕は書かなければいけない。

僕が見た景色を、僕の言葉で、僕が流した血と涙で。

世界の最果てにある「透明な壁」を体験した者の宿命でもある。

 

蛍のあかりが尽きるその日まで。 

エンドロールが終わるその日まで。

「満開の桜の森の下」で君に会うその日まで。

 

散ったヒトヒラの花びらは舞い続ける。